干支と西暦の山に登る
「荏原山歩会」だより


「ブナと花の山旅」 富山県朝日町 朝日岳 2418m


【日 程】2001年8月4・5日
【山 域】北アルプス後立山
【山 名】朝日岳(あさひだけ)2418m
【地 図】1/2万5千:小川温泉、黒薙温泉
【交 通】泊から北又までタクシー利用(小川温泉以降一般車通行禁止)
【登山道】北又から朝日岳まで良好、栂海新道分岐から白高地沢まで木道など危険、
     その先蓮華温泉まで特に危険無し
【水 場】北又、五合目、小屋、頂上越えて2040m、白高地沢
【メンバ】「荏原山歩会」18人
【天 候】4日:曇り後雨、5日:晴れ
【タイム】
今回  =北又→6:50小屋→1:10頂上→5:45瀬戸川→1:30蓮華温泉
ガイド本    5:40   1:00   5:00    1:00
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「荏原山歩会」会員の昨年からの希望場所、花の朝日岳に行く事になりました。
蓮華温泉から登るか北又から登るか思案の末、結局は第1日目を短かくし、小屋
まで行き、2日目は残りの体力と相談して、場合によっては北又に戻る事も考え、
北又から蓮華温泉に抜けるルートになりました。

02:30 富山市荏原公民館発
マイカーは林道入り口の小川温泉までしか入れないので、朝日町泊からタクシー
利用になります。タクシーがこの時間帯しか空いていないと云う事で、約束の4
:00に朝日町役場の駐車場で待ち合わせ、2台のジャンボタクシーで北又に向
かいました。

04:50 北又小屋前(750m)
登山口に小奇麗な小屋が有り、宿泊には余り必要性を感じない小屋ですが、出発
準備や下山時のタクシー待ちに利用するには都合の良い小屋です。持ち主は朝日
小屋と同じと云う事で、気安くトイレや水場や小屋前のテーブルなどを使わせて
くれます。

05:10 出発
登山道は小屋手前の標識を見て50mばかり階段を降り、ダム堰堤のずぐ下流に
架けられた吊橋を渡って取り付きます。
最初は杉植林に付けられたジグザグ道を登りますが、杉植林はすぐに終り、ブナ
混じりの雑木林になると、イブリ山まで1000m続く、イブリ尾根急登の始り
です。

北又の吊橋を渡って取り付きます


05:35 1合目(830m)
少しの平坦地が有って1合目の標柱が見えます。この道は5合目までと、その先
イブリ山頂上までを、ほぼ5等分して合目表示がして有り、合目表示毎に休憩出
来るような水平部が有って、長いイブリ坂を登りきる目安になっています。

この辺りからブナが多くなり、3m級のブナが見え始め、白い樹肌に特有の苔を
付けたブナと、深くなった緑を眺めて行けば、急登もブナの山旅として楽しく登
る事が出来るはずです。
が、皆さんはどうでしょう、「右を見ても左を見ても、振向いても前方を見ても
遠望は効かず、見えるのは小屋とダム湖の水面で、なかなか遠くならない景色に
辛くなる」というところだったでしょうか。

左は切れ落ちた様な急傾斜、右はいくらか緩い斜面を持つ尾根が続き、2合目通
過6:05、汗が吹き出て来ますが、曇り空で無風の天気では涼風の吹き抜ける
所も無く、汗は流れ落ちるだけで、体温調節にはなりません。

06:50 3合目(1060m)
ミズナラ大木とブナの下で休憩、どっかりと腰を降ろす人、着ていた物を脱ぎ去
って裸で横になってしまう者、早くも相当な消耗の様相です。
まあしかし、見た目より大した事は無く、ペースを落として登ると、特に遅れる
様子も無く、全員順調に足を進める事が出来ました。
4合目7:20に通過、イブリ坂のブナ林は益々良くなって来ます。尾根や斜面
の傾斜も幾分緩くなって、ブナ林の展望が良くなり、登山道がブナ林の中を行く
様な、気分の良い場所が連続し、次第に登山意欲を盛り返して来る様です。

富山県東部のブナ林では最高クラスのブナ林です



07:40 ブナ平・5合目(1330m)
5合目は広い休憩場所になっており、ここから200mばかり東に行くと、ブナ
林からしみ出す美味しい清水が有るので、楽しみな休憩場所です。
水の出はかなり細くなっており、2Lのポリタンクに満タンにするのに5分もか
かる量でしたが、全員この美味しい水を味わい、長めの休憩を取り、急登後半の
英気を養いました。
この辺りのブナも見物で、3m越えの美人ブナも有り、わずかにミズナラが混じ
るものの、尾根が広いのでブナ林の見通しが良く、4合目辺りのブナ林が美しく
展望出来ます。

ひとしきり休んで急登の後半に入りました。
6合目標識付近では急傾斜ながら、美しい木肌を見せるブナ林が有り、そこを過
ぎると次第にブナも少なくなり始め、7合目辺りまで来ると、ブナに代わって背
の低い雑木林に針葉樹が混じって来ます。

しばらくは見る物の無い急登になりますが、それでも8合目寸前には草地が広が
っていて、少しの花畑と展望が開いており、気分転換をして登り続けます。
8合目を過ぎると急登に加え、登山道が沢状になった所が有り、歩きにくくなっ
たりしますが、今日最初の本格的花畑に出合いました。
雪渓の跡に広がる白山コザクラの濃い桃色と、少し離れてモミジカラマツの白の
清楚な花が目を楽しませてくれ、花の朝日岳を予感させてくれます。
再び樹林になり、9合目を過ぎると急登もいくらか緩み始めますが、小沢の様な
荒れた登山道をはしばらく続き、傾斜が緩くなった針葉樹林になって、イブリ山
の頂上になります。

未だ元気一杯です



09:45 イブリ山(1791m)
長かったイブリ坂もようやく終え、誰しもがここで大休止を取るので、刈開きは
広く、40〜50人がいても窮屈には感じない事でしょう。
イブリ山は展望の山では無く、切開きこそ広いものの、灌木と笹が茂っており、
わずかに朝日岳方向の展望が効く程度です。今回はその展望もガスがかかって何
も見えませんでした。

イブリ山を出発した時ぽつりと冷たいものを感じたのですが、40mほど下った
鞍部で、先行していたグループが雨具を着けているのを見ても、「そう降り続く
事は無かろう」とそのまま進みました。
しかし、モリアオガエル生息池を過ぎ、再び急登に出合った所で本格的な降りに
なってしまい、あえなく雨具の世話になってしまいました。
それでも「未だそんなに降り続くはずが無い」と思っていたのですが、少し小降
りになったのは、急登を登りきって小さな岩場と鎖の場所に出た所だけで、その
後は全く降り止む様子も見せず、叩きつける様な雨になってしまったのでした。

夕日ヶ原に近づくと、雨に加え遠くに雷鳴が聞こえ始め、次第に近くに聞こえる
様になってしまい、取りあえず雷が近くなる前に、夕日ヶ原末端の樹林に近づい
た方が安全かと先を急ぎ、何とか樹林に近づいた所で、稲光と雷鳴が同時の様な
雷に出合って肝を潰され、ここでしばし停滞して雷の遠のくのを待ちました。

何とか雷をやり過ごして、遅れていた後続の人達の無事な顔に出会い、後は小屋
に向かって一目散です。本来なら辺りの花々を愛でてゆっくり登るつもりでした
が、今回は全く楽しむ事は出来ませんでした。

小屋周辺のチングルマの種



この指揮をしているのが、この小屋の管理人「ゆかりさん」です。今年から小屋
の管理人となって、報道にも取上げられ、少々有名になってしまいました。小屋
のHP(ホームページ)を開いており、「小屋番日記」を綴るなど、文才の有ると
ころも見せる、楽しい母さんです。
私も何度か掲示板にコメントを入れ、やり取りが有るので自己紹介をしたところ、
流石に覚えていてくれました。

食事が終わって外に出て見ると、ガスが濃いながら雨は落ちていなかったので、
少しばかり小屋周辺の花を見てみました。露を付けたチングルマ種とマツムシソ
ウが印象的でした。

明けて5日は最高の天気、満月を見て出発でした。昨日はほとんど楽しめなかっ
た花と展望を楽しみながら上ります。

雲海を眺めて一休み


8月3日
04:30 朝日小屋出発(2140m) 
夜明け前に目が覚めると、部屋に月明かりが差し込んでおり、どうやら天気は回
復してくれた様子でした。
外に出て見ると、満月の様な月が浮かび、下界は雲海に覆われ、今日の好天を約
束してくれる様です。

登山道は一旦下り、樹林の急登を150mも登ると、展望の良い花畑に出ます。
剱・立山・毛勝三山・駒ケ岳・僧ヶ岳が雲海から頭を出して並び、遠に離れて白
山が浮んでいるのも見事です。
登山道脇の花も今が盛り、チングルマや白山イチゲの定番に加え、白山コザクラ
・白山フウロ・アズマギクが目立って、昨日の最悪の天気を忘れさせてくれます。

05:40 朝日岳頂上(2418m)6:00
頂上は広い台地で、方位盤と大きな頂上標識が有って、いわゆる360度の展望
です。

足元の花を見てみろと、白山シャクナゲ・タカネバラ・イブキジャコウソウ・タ
カネナデシコ・ミヤマアズマギク・ミヤマシオガマが見事に咲誇り、展望と相ま
って感動の頂上でした。

妙高から雨飾山、高妻山から戸隠が頭を出していました



ここで朝食をしてゆっくりしたい気持ちですが、今日の昼は蓮華温泉まで行って
からの予定なので、早過ぎる朝食は空腹に至ると思い、まだ頂上にいたい気持ち
を残して下山にかかりました。

東斜面に入った登山道からは、豊富な残雪を付けた斜面が見え、その近くには今
咲き始めたばかりの花々が有り、下山道も楽しい「花の山旅」が続きます。
ミヤマシオガマ(タカネシオガマ?)・ミネウスユキソウ・シロウマアサツキ(ヤマ
ラッキョウ?)など、途切れる事はありません。

06:40 吹き上げのコル・栂海新道分岐(2230m)
左に行けば日本海へと続く栂海新道、右に行けば蓮華温泉への下山道です。
昨日の雨のせいもあるのか、道が急に水っぽくぬかるんでいます。木道が敷いて
有るのですが、ほとんどが大きく傾いており使う事は出来ず、木道の脇を歩く事
になってしまいましたが、高山植物には可愛そうですが、安全のためには致し方
が有りません。
先日はこのルートでケガをした人が有ったと云う事で、小屋でも「木道は有る歩
かない様に」と指導していました。

水の流れる沢も何度も渡りますが、昨日の大雨で昇って来た人達は「大変だった」
と言っていましたが、この様子では沢を渡るのも相当危険だった事でしょう。

07:05 水場(2020m)7:30
しっかりした沢が有り、上を見上げると立派な岩峰が突き上げています。特に表
示は有りませんが、ここが2020mの水場です。時間も朝食の時間です、一休
みして朝食で下山の体力を付ける事にしました。

登山道は斜面をトラバースする様にしてどんどん下って行きます。一旦ダケカン
バと針葉樹の樹林に入り、後ろを振り向くと、素晴らしい展望をみせてくれた朝
日岳が、別れを言っている様にそびえ立っていました。

五輪尾根に出る少し前に、「朝日岳まで3Km」の標識が有り、未だこんなに少
ししか進んでいないと、がっかりしますが、この標識は少々違っているのではな
いでしょうか。
五輪尾根に出た所で、再び眼下に花畑と前方の展望が広がり、山斜面に赤屋根が
見えます。あれが今日の山行終点の蓮華温泉で、ずいぶん遠いと思うか、だいぶ
近づいたと思うか、人それぞれでしょう。

傾いたり急傾斜の木道は続きます。「滑ります」とマジックで書いた所も有るほ
どですので、無理に木道を歩く事はせず、地道を歩く様にしました。

09:20 花薗三角点(1754m)
美しいピンクのシモツケソウの群生を楽しみ、草原を通り越して低い樹林に入っ
た所に三角点が有ります。ここを過ぎて急勾配になっても更に木道が続き、危険
な道が続きます。
登山道が樹林帯に入るとさすがに木道は無くなり、代わって粘土質の様な滑りや
すい道になります。これがカモシカ坂で、木道と同様に危険な下りです。ロープ
が必要ではと思う様な所が有りますが、一箇所もロープを見る事は有りませんで
した。

10:40 白高地沢(1350m)
やっと白高地沢に出会えました。朝日小屋のHPで何度も紹介された、大水毎に
流されると云う角材の橋ですが、昨日の雨には耐えた様です。

もう川に出合ったので、「蓮華温泉への登り返しも近いのでは」と思うかも知れ
ませんが、これから瀬戸川へのトラバースは簡単ではありません。登ったり降り
たりの道が続き、白高地沢の音が消え、瀬戸川の沢音が聞こえて急な下りになっ
て、ようやく瀬戸川の左岸を行くようになります。

白高地沢の橋


11:45 瀬戸川橋(1150m)
立派な鉄製の橋で川面から高いので、これなら流される事は無いでしょう。
さあ、ようやく下りはここまで、残り300mの登りで蓮華温泉です。全員が揃
ったところで上り返しに入ります。ここまで来れば下りの様な危険はないので、
2時間以内には全員が蓮華温泉に到達出来る事でしょう。

12:30 兵馬の平(1330m)
今回の山行最後の花畑です。シモツケソウとオオバギボウシの大群生が後押しを
してくれます。ブナ林も立派になって来ました。3m級のブナが次々と現れて、
これも後押ししてくれます。雪倉岳分岐を過ぎ、キャンプ場を過ぎれば終点はも
うそこです。

兵馬の平、シモツケソウと(オオバ)ギボウシの群生


13:15 蓮華温泉(1450m)
頑張った金森さんと武田さん、先頭と30分差は大した事は有りません。全員無
事の到着でした。


17番・18番の到着は、わずか30分の遅れでした


後記
4日の大雨と雷にたたられ、どうなる事かと思った山行でしたが、朝早く取り付
いた事も良かったか、その雨・雷も無事やり過ごす事が出来、ずぶ濡れで入り込
んだ朝日小屋、時間が有ったので楽しい語らいが出来ました。
明けて5日の花畑と展望は最高でした。長い下りと登り返しは大変だったと思い
ますが、最後に入った蓮華温泉はやっぱり最高でしたね。

      2001年8月25日  富山橋




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